池田信夫「イノベーションの経済学」第1章 イノベーションとは何か
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先日「e-ラーニング「SBI大学院大学」がYouTubeに池田信夫の講座動画を公開」という記事を書きました。
YouTubeでアップされている池田信夫さんの「イノベーションの経済学」という授業が非常に面白そうだったので、本日「第1章 イノベーションとは何か」を受講してみました。
池田信夫さんは難しいことをすごく分かりやすく説明してくれます。
経済学素人の僕でも、非常に興味深く受講できました。
なんだか、ちょっとだけ頭が良くなったような気がしてきています。(笑)
以下は「第1章 イノベーションとは何か」の9つの動画です。
動画の下のコメントは、僕が気になるところをメモ的にピックアップしたものです。
来週末に「第2章」を受講してみたいと思っています。
イノベーションの経済学
第1章 イノベーションとは何か
第1節 本講義のねらい
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昔は「技術革新」という言葉が使われていたが、今はもっぱら「イノベーション」という言葉が使われるようになった。
経営学の本では半分くらい「イノベーション」について語られているくらい重要な概念として扱われている。
しかし、経済学の教科書では、「イノベーション」という言葉が出てこなかった。
ビジネスでは重要なものとして扱われているのに、経済学の分野ではちゃんと語られたことがないところが「イノベーション」という概念の奇妙なところ。
しかし、最近では経済学の分野でも「イノベーション」の重要性が語らるようになったきた。
経済学では商品の需要と供給が均衡するという形で経済システムをとらえるので、均衡しちゃったら「イノベーション」なんてなくなる。
イノベーションは需要と供給が均衡する前の世界、つまり世の中で何が売れるのか分からない、どういう技術が開発できるのか分からないというところから、ある種の冒険をして、新しいモノに賭けるというプロセス。
資本と人口の集中が起きると成長が高まる。人口の多い中国やインドでは田舎から都市に人口が集まってくるだけでも成長率が維持できる。お金も世界中から集まってくるので資本の蓄積もできる。
資本と人口が集中する時は、素直に成長が進む。日本では1960年代ぐらいまでは、そういう形で成長が進んだ。
でも、それ以降は限界がくる。日本では60年代末〜70年代に石油ショックにぶつかった。
資本と人口の集中以上に成長率を高めるためには、知識や情報が大切になってくる。単なる技術だけでは伸びない。
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日本は戦後、技術立国を目指した。理科系の学生を大量に養成して、理科系の学生が新しい技術を開発することによって日本は成長していくという着眼点。
日本は理科系の学生が先進国で多い方。数学や理科がこれほどできる学生がいる国はそれほどない。日本の学生が理科系に強かったことが、日本経済を大きく牽引したことは間違いない。
ただし、「イノベーション」を「技術革新」と訳すのは誤訳。
Websterには「the introduction of something new」と書いてある。
「革新」とだけ訳した方がよかった。必ずしも、技術だけがイノベーションではない。
ハーバード大学教授のジョセフ・シュンペーター(Joseph Schumpeter)は「イノベーション」を「発明を製品に結びつける過程」と定義した。
発明はイノベーションの1つの条件だが、発明するだけではイノベーションにならない。製品に結びつけなければイノベーションにならない。
たとえば、紙も火薬も活版印刷も西暦1000年以前に中国で発明されているが、新しい産業は生み出さなかった。15世紀にグーテンベルクが実用化した活版印刷はその後の世界を大きく変えた。
2000年頃のTIME紙による「前の1000年間で最も大きな出来事はなんだったか?」というアンケートに対し、一番が「活版印刷の発明・実用化」だった。
活版印刷が利用され書物が印刷され、聖書が印刷されて宗教改革が起こり、悪い面では宗教戦争が起こるといった社会全体に色々なことが起こった。
このような波及効果を全部含めてイノベーション。
波及効果がいかに起こせるかというところまで計算をするのがイノベーションの重要な要素。
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日本はイノベーションがないかといえば、そんなことはない。
たとえば、トヨタの「カイゼン」。
自動車のような何を作るかということがはっきりしていて、みんなで協力して改善していくのは日本は得意。(すり合わせ)
シリコンバレーでガレージから大企業が生まれるのは、半導体や特定のソフトウェアだけを造ればいいから。
Windowsのソフトウェアと作るとしても、Windows自体を作る必要はない。周辺機器なら周辺機器だけを作ればよい。
YouTubeにしても、パソコンのモニタを作る必要はない。
技術がモジュール化している。モジュールの組み合わせによるイノベーションがシリコンバレーでは起きている。
ハーバード大学教授のクレイトン・M・クリステンセン(Clayton M. Christensen)の「イノベーションのジレンマ」という本で区別した「持続的イノベーション」「破壊的イノベーション」の2つの概念がイノベーションを語る上で非常に重要な概念。
イノベーションのジレンマ—技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
クレイトン・クリステンセン
日本企業は持続的な形のイノベーションが得意。携帯電話なら今よりも薄く軽く。今までの延長上のイノベーション。
NTTは最初はインターネットの登場を重視していなかった。
持続的イノベーションにこだわって没落する企業は山ほどある。
古い企業を壊して、新しいイノベーションを起こしていく破壊的イノベーションが日本経済には足りない。
第2節 資本主義の奇蹟
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近代資本主義と言われるものは、18世紀の産業革命あたりから始まったと考えられている。
Gregory Clarkの「A Farewell to Alms」によると、過去1000年間の歴史の大部分において、人類の平均所得は1年に1ドルだった。
A Farewell to Alms: A Brief Economic History of the World (Princeton Economic History of the Western World)
Gregory Clark
(↑グラフを「なか見!検索」で見ることができます。)
1700年代後半から1800年頃にかけて急速に所得が増えた。
いったい何がこの爆発的な経済成長をもたらしたのか?それは分からない。色々な複雑な要因がからんでいる。
コアになったはイギリス。
17世紀後半〜18世紀初頭に、今でいう産業革命と呼ばれる色々な発明が特許として申請され、特許になったことによって様々な形で社会全体に広まるようになった。ある時期に革命的に産業がはじまったものではない。
また、産業革命のもう1つの重要な要因は、17世紀後半のイギリスに起業家が集まったこと。
たとえば、蒸気機関がいくら発明されても、それを利用して何か新しい工場を作ろうという人が出てこなければ、宝の持ち腐れ。
綿織物といった多くの大衆に売れるものは、工場を作って蒸気機関で動く機械で大量生産をする仕組みが、イギリスではじめて成立した。
技術だけではなく、技術を利用した工業が成立し、それを受け入れる市場が成立していたことが大きい。
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産業革命が起こった前提としては、グーテンベルグの活版印刷の実用化が大きい。
それ以前は、知識は教会が独占していた。
教会の聖職者が口から口へ知識を伝え、職人も弟子に技術を口で伝えて教えた。秘伝としてなるべく社会に広がらないように伝えた。
しかし、活版印刷の実用化後は、紙に記録して字で書物として知識や技術が伝えられるようになった。
そして、別々の世界にあった技術と科学(物理学の法則などの知識)が出会ったことが産業革命の前提としては大きい。
15世紀の印刷革命は「知識の解放」となり、16世紀の科学革命(自然の「脱意味化」)につながった。
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マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という有名な本にも書かれているが、
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)
大塚 久雄 
それまで人々はキリスト教の教会によって毎日の生活を支配・コントロールされていた。
「個人」というものが「教会」という精神的権威の下にあった。教会という共同体の中にいた。人々は個人で事業を興すということはありえない。
ところが、16世紀移行の宗教革命によって、カトリック教会から神道が飛び出して、自分たちの教会を造るようになった。これは、今までのカトリック教会という権威から個人が独立するというプロセスだった。
このことは、印刷物の発明と関係があった。
昔は聖書はギリシャ語で書かれていた。
16世紀以降に出てきた聖書はドイツ語で書かれていた。人々が普段喋っている言葉。
すると、「神父さんの言っていることと違うじゃないか。神父さんの勝手な解釈なんじゃないか」と思い、本当のテキストにのっとった教会を作りましょうとなり、カトリック教会に対して近代的な個人が自意識を持ち始めた。
自分たちの新しい教会を作るという革命に近いことを始め、それを許さないカトリック教会との宗教戦争が起こる。
16世紀の宗教改革によって「近代的な個人」が登場した。
そして、17世紀以降の市民革命によって、法的・政治的に個人が財産を所有する「財産権」という概念が確立された。その「財産権」は国王であっても侵害していはならない。(中国では最近まで「財産権」という概念がなかった。)
個人が「財産権」でもって絶対的な自立性を持つことが、資本主義という経済システムとイノベーションの重要な原因だった。
第3節 経済成長のエンジン
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経済成長の中でイノベーションは重要であるということは、かなり昔から分かっていた。
人口が増えると、増えた分だけ働く人(労働力)が増えるので経済成長が起こる。資金が集まってくると、集まった分だけ経済成長が起こる。
しかし、労働人口と資本の増加だけで経済成長は説明できるのだろうか?半分以上は説明できない。謎。パズル。
資本と労働で説明のできない要因が一番大きい。TFP(Total Factor Productivity・全要素生産性)。
1億の売上がある企業の原材料費が3000万、人件費が2000万なら原価が5000万で利益が5000万となる。こういう企業は成長する企業。
原価にプラスしてマーケットで売れる新たな付加価値を生み出しているから、5000万円の利益が出る。
今までになかったものを、その企業が生み出している。新しいものを導入することによって生まれている利益。この部分がイノベーション。
60年代までは世界の経済は資本と労働を蓄積させて順調に伸びてきた。
西側諸国では、70年代ぐらいから資本と労働の成長が鈍化してきた。
アメリカは70年代に減速して、80年代にはピークアウトしたと思われる時期があった。
最盛期でGMは70万人、IBMは40万人の社員がいた。規模としては1つの都市みたいものなので、官僚が大量に発生し、大企業病におちいる。新しいイノベーションは出てこない。個人のモチベーションが下がっていく。
80年頃、GMが70万人で500万台、トヨタ5万人の社員で340万台の車を作っていた。
GMはトヨタの10倍以上の社員がいながら、1.5倍くらいの車しか作れていなかった。
GMは代表的な大企業病。組織が大きくなって、官僚的になって、労働組合の発言力が強くなる。こうなると、成長は難しくなり、収益も上がらず、給料も上がらず、モラルも下がるという悪循環になる。
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90年代以降、アメリカの企業は持ち直す。
再成長の要因は、ITとファイナンス(金融)。
ITTという通信会社がホテル、レンタカー、レストランといった関係のない業種をたくさん集めてコングロマリットを作った。
GMがいろいろな車種をたくさん作った。
U.S. Steel(鉄鋼会社)は、様々な新しい分野に手を出す。
これらのコングロマリットは、60年代には企業の規模が大きくなり株価が上がるので良しとされてきた。
ところが、70年代に入ると収益落ちてきた。そもそも、電話会社にホテル経営のノウハウはないから競争に勝てない。
企業買収して大きくなったのだから、余計な部門を売却すればよい。
一旦大きくなった会社は、売却して売上が小さくなるのは嫌がる。
自分で会社を売りたいという経営者はいない。
80年代のアメリカでは、企業を売ったり買ったりする企業買収・企業売却をすることにより、効率の悪い多角化企業から専門化した企業に集約していくということが行われた。
これを行ったのが投資ファンド。企業買収を専門にするファンドは80年代にたくさん生まれた。ファイナンスの革命が80年代に起きていた。
日本では2000年代に入ってようやくはじまった。
ファンドによって、効率の悪い企業から切り離して、効率の良く運営できる人に売るという企業の組み替えによって、企業の効率が非常に上がった。
ファイナンスは場合によってはITよりも重要な要因だったかもしれない。
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日本経済は90年代「失われた10年」と言われた。
日本はバブル崩壊以降、80年代のアメリカと似たような状況にあったが、日本にはアメリカのような資本市場がなかった。
資金の半分以上を銀行が持っていて、不動産業者に貸していたというケースが多い。
銀行の資金は投資ファンドと違って、預金者に対して元本保証しているので、不良債権の出た企業を売って損を出すということができない。
損切れないまま損を抱えて、10年くらい置いておく。そして、ますます地価が下がるという悪循環になる。
2000年初頭に不良債権は回収したが、日本の銀行がファイナンスを支配するというシステムがあまり変わってないので、ファイナンスの中でのイノベーションが起きない。
新しい企業が生まれてこない、新しい企業の組み合わせによって別のイノベーションを起こすといったことができない。
イノベーションは技術が変化するだけでなくて、産業構造を変えていくことが重要。
産業構造は大きな進化と小さな進化がある。
大きな進化とは、汎用技術(General-Purpose Technology)。新しい今まで全く違うプラットフォームを作る。例えば、蒸気機関に対して電力。機械式の計算機に対してパーソナルコンピューター。インターネット。
インターネットとパーソナルコンピューターで新しいプラットフォームができた。
メインフレームを捨てて、パーソナルコンピューターを選ぶということは、メインフレームにぶらさがって仕事をしていた人の仕事がなくなるということ。その決断ができるかということが、経営者として重要。
小さな進化とは、固有技術のこと。オフコンとか。日本は小さな進化を得意とする。
しかし、各企業の固有の技術はどんどんなくなっていって、プラットフォームである汎用技術とソフトウェアとしてアプリケーションの水平分業が起こる。
すべてを1つの企業が系列下請けを使ってすり合わせてやっていくという日本の産業構造が新しいタイプのイノベーションに向いていない。
「第2章 イノベーションの思想史」に続く
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